コラム

【うつで休職・離職】復職・転職のポイントと就労移行支援 活用ガイド(面接例文付き)
公開日:2025.12.09
更新日:2025.12.09

うつ病による休職・離職は決して珍しいことではありません。厚生労働省が公表している 「労働者の心の健康の保持増進のための指針」でも、メンタルヘルス不調による離職・休職者は年々増加傾向とされています。
(出典:厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
うつ病で休職や離職をすると、「また働けるのだろうか」「職場に馴染めるか不安」という気持ちになるのは自然なことです。
このコラムでは、厚生労働省のガイドラインをもとに、復職のステップ、転職時の注意点、さらに就労移行支援を活用してスムーズな社会復帰につなげる方法を詳しく解説します。
目 次
うつ病からの復職はいつ可能?目安となる5つのステップ【厚労省ガイドライン準拠】

うつ病や適応障害で休職した後の「復職までの流れ」は、本人・主治医・企業・産業医が連携して進めることが重要です。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、復職までのプロセスを以下の5段階に整理しています。これは企業規模に関わらず活用でき、就労移行支援を利用する場合にも指標として非常に有効です。以下、5つのステップをご紹介します。
① 病気休業開始および休業中のケア

休業開始直後は、何よりも「治療と安静の確保」が最優先です。
うつ病の回復には、脳や身体をしっかり休める期間が必要で、無理に動こうとすると症状が悪化したり、回復が長引いたりする可能性もあります。
企業側は、本人への負担を避けつつ「適切な距離感」で連絡を取り、必要以上に業務の話題に触れないよう配慮します。また、産業医や保健師がいる企業の場合は、一緒に治療を支える環境を整えていきます。
休業中に行われるケアとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 主治医の診察と治療(薬物療法・カウンセリングなど)
- 生活リズムの安定(睡眠・食事・運動の調整)
- ストレス要因の洗い出し
症状がある程度安定してくると、外出練習や簡単な作業など「活動量を少しずつ増やす工夫」が推奨されます。医療機関のデイケアなどを利用し、リハビリ的な活動を無理のないペースで開始するとよいでしょう。
ただしこの時点では、まだ復職の準備というよりも、「日常生活を健康的に過ごせる状態の確立」を意識して過ごすことが大切です。
●精神科デイケアについて、もっと知りたいかたはこちらをご覧ください。
>>>自立訓練と精神科デイケアの違いとは? 利用方法やメリット・デメリット
●傷病手当金や休職中の過ごし方については、こちらで解説しています。
② 主治医による「職場復帰可能」の判断

一定期間の治療と休養を経て、症状が改善してくると、主治医が「復職の可能性」を評価します。
これは“復職してもよい”のではなく、あくまでも“医学的には復職が検討できる状態になった”という意味です。 主治医が確認するポイントとしては、次のような項目があります。
- 通勤に耐えられる体力があるか
- 集中力や判断力が戻っているか
- 日中の活動を安定して継続できるか
- 職場のストレスにある程度対応できるか
③ 企業側による職場復帰可否の判断と復職支援プランの作成

主治医が「復職可」と判断した場合でも、企業側の最終判断が必要です。
企業は産業医・上司・人事などと連携し、本人の仕事内容や働く環境を踏まえて、復職が可能かどうかを検討し、復職支援プランを作成します。主に次のような点を確認します。
- 勤務時間を段階的に調整できるか
- 業務内容の負荷を軽減できるか
- 産業医や上司によるフォロー体制が整っているか
- リハビリ出勤(試し出勤)の実施可否
④ 最終的な職場復帰の決定

本人・主治医・企業側が合意し、「復職条件」が明確になったら正式に復職が決定します。
ここでは、復職後の勤務時間、業務内容、配慮事項、緊急時の連絡方法などを文書に残し、共有しておくのが望ましいです。 また、復職直後は体力や集中力が万全ではないケースも多いため、次のような工夫・配慮があると、職場復帰はよりスムーズになるでしょう。
- 復帰後は軽めの業務からスタート
- 長時間労働・高ストレス業務は避ける
- 週単位で体調を確認しながら段階的に業務レベルを戻す
⑤ 職場復帰後のフォローアップ
復職後3〜6か月は、心身が最も不安定になりやすい期間であり、厚労省の手引きでも「重点的なフォローアップ」が推奨されています。 フォローアップとして一般的なのは以下のような取り組みです。
- 定期的な産業医面談
- 業務量・人間関係によるストレス状況のチェック
- 必要に応じて配置転換や業務の再調整
(出典:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」)
復職か転職か?判断ポイント

人によっては元の職場への復職と、別の企業への転職のどちらにすべきか、悩む場合があるかもしれません。
復職か転職か迷う場合の判断ポイントをご紹介します。
(1)職場環境が原因だったかどうか

もし「人間関係」「長時間労働」「過度なノルマ」など、職場に明確なストレス要因があった場合は、復職が再発リスクにつながることがあります。逆に、業務自体は好きだったり、人間関係に問題がなかった場合は、復職がスムーズに進みやすい傾向にあります。
(2)復職制度が整っているか
企業によっては、段階的勤務やリワークプログラムなど、復職支援制度が整っています。
制度が整っていない企業の場合は、 JEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)のリワーク支援や医療機関のデイケア、就労移行支援などの福祉サービスを利用すると、客観的に「働く準備が整っているか」を評価でき、復職がスムーズに進むメリットがあります。
身近に自身が利用できる復職制度があるかどうか、も復職を目指すかどうかの判断ポイントになるでしょう。
(3)今の体調で以前の業務ができるか
「集中力が以前ほど続かない」「対人業務が不安」などがある場合は、転職をして業務内容や就労環境を変えることで、その後の仕事が続けやすくなると言えます。
うつ病からの転職活動のポイント

では、復職ではなく転職をしようと決めた場合、どのような点に注意して転職活動をするといいでしょうか。
(1)体調が安定してから転職活動を始める
転職はエネルギーを使うため、主治医が「再就労可能」と判断してから始めることが推奨されます。
転職後に体調が再度悪化しないためにも、体調の安定は転職活動を始めるうえでの前提になると言えます。
(2)働き方・雇用条件の優先順位を明確にする

次の仕事を長く続けるために、前職での経験を考慮したうえで、今の自分に合う働き方や条件を整理しましょう。以下のポイントはほんの一例です。なるべく具体的に、自分にとっての優先順位を検討しましょう。
- 短時間勤務から始めたい
- リモートワーク中心がよい
- ストレスの少ない環境を希望したい
- 電車通勤のストレスが大きいので、自宅近くで働きたい
- 繁忙期がなく、業務量は一定がよい
(3)企業へ病気を開示するか(オープン/クローズ)を考える
うつ病の開示(申告)は非常に悩むポイントです。基本的には、「配慮が必要かどうか」で判断します。
開示したほうが安心なケース
- 定期的な通院が必要
- 急な残業やシフト変更に対応できない
- クローズで働くと再発リスクが高い
開示が必須とは言えないケース
- 現在は治療が終了している
- 業務に支障がなく、配慮が不要
- 主治医から問題なしと判断されている
なお、合理的配慮は企業の義務であり、開示による不利益な取り扱いは禁止されています。
(出典:政府広報オンライン:事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化)
(4)ハローワーク・就労支援サービスの活用

公的機関は障害者雇用の求人情報や相談支援が充実しています。
就労移行支援などの福祉サービスでは、転職に必要な訓練のほか、面接に支援者が同席するなどのサポートも受けられ、入社後の職場定着の支援もあります。相談体制が整うことで、安心して仕事を継続しやすくなります。
(5)療養によるブランク期間をどう伝えるか

〇うつ病を開示する場合
「自分の体調が回復していること」そして「長期就労できる実績や根拠」を説明できるといいでしょう。
以前の職場に関しても、そこでの出来事が不調の原因になったとしても過度に批判的な発言は避けるのが無難です。
再発防止の対策をしっかりと伝え、「現在は働ける状態である」という安心材料を提示することが重要です。現在、そして未来に焦点を当てて伝えるのがよいでしょう。
【例文】「うつ病のため○ヶ月ほど療養していましたが、治療の結果、現在は主治医から就労可能との判断を受けています。生活リズムの改善やストレスマネジメントにも継続して取り組んでおり、再発防止にも努めています。具体的には…」
もし、就労移行支援を利用している場合は、訓練による通所の実績を伝えることも、体調が安定していることの根拠となります。
【例文】「就労移行支援事業所に週5日通所できています。ビジネススキルや体調管理の訓練を受けており、実習では〇日間の勤務を安定して継続できました。働くためのリズムづくりや相談体制も整っており、長く働き続けられる環境ができています…」
〇うつ病を開示しない場合
病名は「個人のプライバシー」なので、開示は義務ではありませんが、ブランク期間について質問された場合にはスムーズに答えられるようにしておきましょう。
【例文】「体調面で無理が生じたため、しばらく療養に専念していましたが、現在は医師から就労可能と判断され、問題なく働ける状態になっています…」
病名を言わない分、採用側は「本当に大丈夫なのか」が気になります。医師から就労許可が出ているなど回復したことの根拠を伝えるといいでしょう。
就労移行支援・自立訓練を活用した社会復帰

就労移行支援でのサポート
就労移行支援では、うつ病のある方が安心して職場復帰・転職を進められるよう、以下のサポートを提供します。
- 生活リズムの改善(朝起きる・通所習慣)
- ストレス対処法の習得
- PCスキルやビジネスマナーの訓練
- 職場実習
- 応募書類の添削・面接練習・面接同行
- 就職後の定着支援(企業訪問・面談)
体調を整えながら次の仕事への準備にじっくりと時間をかけたい、というかたには「自立訓練(生活訓練)」というサービスを検討してもいいかもしれません。
自立訓練(生活訓練)という選択肢

自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した生活に向けて、生活能力の維持・向上を目指して活動をする場です。「生活リズムを整えること」「外出の機会を増やしてコミュニケーション力を高めること」など、それぞれの課題に応じて目標を設定します。自立訓練で一定期間を過ごし、就労移行支援に切り替えるかたも多いです。
就労移行支援と自立訓練の両方のサービスを提供する「多機能事業所」もあります。
どちらを利用したらいいかわからない場合は、多機能事業所で両サービスを見学するのがよいでしょう。
このような就労移行支援や自立訓練などの福祉サービスを利用することで「働くための準備」が安心して進められます。
アクセスジョブの多機能事業所一覧(クリックで事業所詳細へ)
多機能事業所では、就労移行と自立訓練の利用切り替えがスムーズな場合が多く、環境を大きく変えずに体調や状況に合わせてサービスの変更がしやすいというメリットがあります。
まとめ
うつ病からの復職や転職は、焦らず段階を踏むことが何より重要です。復職のステップや働き方の選択、開示の判断は人によって異なるため、専門機関や主治医と相談しながら、無理のない働き方を探していきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. うつ病からの復職にはどれくらいの期間が必要ですか?
厚労省の「職場復帰支援の手引き」では、休養期 → リハビリ期 → 試し出勤 → 本格復帰という段階を推奨しています。体調の安定が最優先です。
Q2. 復職と転職ではどちらが良いですか?
ストレス要因が職場にある場合は転職が向いています。環境が整っている場合は復職がスムーズです。
Q3. 会社にうつ病を開示したほうが良いですか?
配慮が必要な場合は開示がおすすめです。業務に支障がない場合は非開示も可能です。
Q4. 就労移行支援ではどんなサポートが受けられますか?
生活リズムの改善、職業訓練、書類・面接支援、実習、定着支援まで総合的にサポートが受けられます。
上記のご質問以外の不明点、ご相談はぜひ最寄りのアクセスジョブまでお気軽にお問合せください。