コラム

就労定着支援とは? 支援内容や利用料金、利用期間などを解説
公開日:2025.07.06
更新日:2025.07.05

就労定着支援は、職場への定着を図る目的で提供されている障がい福祉サービスです。
就労移行支援などを利用して一般就労を実現しても、悩みを抱えて早期に離職してしまう方は少なくありません。就労定着支援は、就職後の悩みの解消と、働きやすい環境づくりをサポートしてくれます。では、就労定着支援を活用すると、具体的にどのような支援が受けられるのでしょうか。

本記事では、就労定着支援の概要や就労移行支援との違い、具体的な支援内容、利用するメリットなどを解説します。一般就労を希望している方や一般就労が決まった方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
>>> 目 次 <<<
1.就労定着支援とは?
就労定着支援とは、障がいがある方が一般就労した企業で、長く働き続けられるように支援する障がい福祉サービスのことです。
就労定着支援は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」の施行に伴い、2018年4月から開始されました(※)。
それ以前も、就労移行支援事業所などが中心となって、一般就労後の定着をサポートしてきました。
しかし、一般就労をする障がい者の方が増えると同時に、就労定着のためのきめ細やかな支援へのニーズが高まり、現在は独立した障がい福祉サービスとなっています。
※参考:厚生労働省社会・援護局.「就労定着支援の実施について」p1(参照2025-04-27).
2.就労定着支援と就労移行支援の違いは?
就労定着支援と就労移行支援の違いは、前者が各種障がい福祉サービスを通して一般就労を実現した方を対象としているのに対し、後者は一般就労を目指す方を対象としていることです。

就労定着支援は、就労移行支援などの障がい福祉サービスを経て一般就労した方が、その企業で長く働き続けられるように支援するものです。就労を実現した方が働く上で感じる悩みや不安に、就労定着支援員が寄り添い、安定した就労をサポートします。
一方、就労移行支援は、障がいや難病などを抱える方で一般就労を希望する方に対して、職業訓練や企業実習、就職活動などを支援する障がい福祉サービスです。就職後の定着支援も実施(6か月間)していますが、主に一般就労の実現のためのサポートを行います。
就労移行支援を利用し、一般就労をした場合、希望すれば就労定着支援を利用できます。
3.就労定着支援の具体的な支援内容

就労定着支援で受けられる支援内容をご紹介します。
●悩みのヒアリング
就労定着支援では、就労定着支援員が利用者の方に対して、悩みのヒアリングを行います。
一般就労を実現すると、就職前とは異なる新たな悩みを抱えやすいです。例えば、以下のような悩みがあります。
- 仕事のミスが多い
- 上司や同僚との人間関係がうまくいかない
- 遅刻や欠勤を繰り返してしまう
- 周囲の評価が気になる
- 生活リズムが崩れる
- お金の管理がうまくできない
一般就労後にこのような悩みを持っても、誰にも相談できず、苦しい状況に追い込まれてしまう方も少なくありません。就労定着支援では、就労定着支援員が定期的にヒアリングを実施し、抱え込んでいる悩みを把握します。
●悩み解決のためのサポート
就労定着支援では、利用者の方が抱えている悩みを解決するためのサポートも行います。

ヒアリングの内容を基に、過去の事例を参考にしながら、悩みを解消するためのアドバイスを行う他、就労定着支援員が職場の上司などと面談し、利用者の方が抱える悩みを共有します。
職場の方と悩みを共有することで、周囲の方からの理解を得やすくなり、働きにくさを改善できるでしょう。
また必要に応じて、医療機関や福祉機関と連携を取り、さまざまな角度から悩みを解決するために支援を行います。
●就職後はさまざまな悩みや課題を抱えやすい
一般就労を実現すると、ほとんどの方が悩みを抱えてしまいます。悩みに対してどのように対処すれば良いか分からず、離職を選んでしまう方も少なくありません。
就労定着支援では、支援員と悩みを共有でき、解決のための客観的なアドバイスを受けられるため、一人で悩むストレスから解放されるでしょう。また、職場や医療機関などとも連携を取ることで、利用者の方が働きやすい環境を整えられます。
4.就労定着支援を受けるメリット

就労定着支援を受けると、就職者はもちろん雇用した会社側にもメリットがあります。双方にどのようなメリットがあるのかを、詳しく見ていきましょう。
●就職者側のメリット
就職者にとって就労定着支援を利用するメリットは、仕事や日常生活で抱えるさまざまな悩みを解決できることです。
一般就労をすると、生活は大きく変わります。業務に慣れないだけでなく、職場の雰囲気になじめず、大きな不安やストレスを感じてしまう方も少なくありません。上司や同僚になかなか相談できず、どうすれば良いのか分からなくなってしまう方もいます。
また一般就労により生活リズムも大きく変わるため、朝起きられなくなる方や薬を飲み忘れてしまう方もいます。体調が優れず、日常生活に支障が出てしまう方もいるでしょう。
加えて、これまで以上の収入を得ることになりますが、お金をどのように管理すれば良いか分からず、散財を繰り返してしまう方も少なくありません。

就労定着支援を利用すれば、仕事上の悩みを支援員がしっかり聞き、適切なアドバイスをしてくれるため、円滑に業務を進めやすくなるでしょう。支援員が利用者の方にどのような配慮が必要なのかを伝えてくれるため、働きやすい職場環境も整いやすいです。
また直接業務とは関係のない悩みも、解決に向けてアドバイスをしてくれるため、悩みをその都度解決しやすいです。医療機関や福祉機関とも連携を取ってくれるため、体調面や生活面の不安も解消でき、安心感を持って働き続けることができるでしょう。
●会社側のメリット
就職者が就労定着支援を利用することで、会社側は従業員に対して適切な支援を行えるようになります。
障がいのある方や難病を抱える方を積極的に受け入れている企業は増加傾向にあります。しかし、これまでそういった方を受け入れたことがなく、どのようにサポートして良いか分からないと悩む企業の担当者は少なくありません。

また、一口に障がいや難病といってもさまざまな種類があるため、受け入れ実績がある企業でも、その方の特性や症状に合わせてどのようにサポートするべきか、手探りになってしまうこともあります。
就職者が就労定着支援を利用していれば、就労定着支援員を通して、就職者が抱える悩みや特性、必要な配慮などを把握できるため、適切なサポートが行えるようになります。
医療機関や福祉機関との情報共有も、支援員の仲介の下で行われるため、より円滑に行えるようになるでしょう。
また多くの経験を持つ支援員からのアドバイスにより、社内に障がい者雇用のノウハウを蓄積できます。その結果、さらに積極的に障がい者雇用を進められるようになるでしょう。
5.就労定着支援の対象者や利用期間・利用料金について
ここからは、就労定着支援の対象者や利用期間、利用料金について詳しく見ていきましょう。
●就労定着支援の対象者
就労定着支援の対象者は、以下のような障がい福祉サービスを利用し、一般就労を実現した方です。
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 生活介護
- 自立訓練サービス
就労移行支援を行っている事業所が就労定着支援も実施しているケースが多いため、そのまま同じ事業所で就労定着支援を受けるのが一般的です。これまで接してきた支援員から継続してサポートを受けられるため、就職後も安心できるでしょう。
ただし、就労定着支援は障がい福祉サービスの中ではまだ新しいサービスのため、通っていた事業所が就労定着支援を提供していない可能性もあります。現在通っている事業所が就労定着支援を提供していない場合は、市区町村の担当課で相談してみましょう。
まだ就労定着支援を行っていない事業所が今後新たにサービスを提供する可能性もありますが、就労移行支援などをこれから受けようと考えている方は、事業所を選ぶ際に就労定着支援にも対応しているかを確認しておくのがおすすめです。
●就労定着支援の利用期間
就労定着支援の利用期間は、原則最大3年間です。サービス利用中は、1年ごとに支給決定期間が更新されます。
利用を開始できるのは、就職後7カ月目から最大3年6カ月目までです。なお就職から6カ月間は、それまで利用していた事業所でサービスの一環として定着支援を受けられます。

ただし、就労定着支援の利用期間が終了したからといって、それ以降支援が受けられなくなるわけではありません。
3年間の利用期間を終了した後、引き続き支援が必要だと判断された場合は、事業所が任意で継続して定着支援を行ったり、障害者就業・生活支援センターといった公的機関が引き継いで支援を行ったりすることがあります。
利用期間終了後の対応は市区町村によって異なるため、具体的な対応は、事業所や役所の担当課に問い合わせてみてください。
※参考:厚生労働省.「新サービスの基準について」p8 (参照2025-04-27)
●就労定着支援の利用料金
就労定着支援の利用料金は、利用者負担が1割、残り9割が自治体負担です。利用料金は事業所によって異なるものの、一般的に自己負担額は月々1,050〜4,500円程度とされています。
ただし前年度の世帯所得に応じて、利用料金の自己負担額の上限が決められているため、中には無料でサービスを利用できる方もいます。自己負担額の上限は、以下の通りです(※)。
| 区分 | 世帯収入の状況 | 負担上限月額 |
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯(注1) | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円(注2)未満) ※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます(注3)。 | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 3万7,200円 |
(注1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が約300万円以下の世帯が対象
(注2)収入が約670万円以下の世帯が対象
(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となる
詳細は自治体によって異なるため、詳しい料金に関しては市区町村の担当課に問い合わせましょう。
※参考:厚生労働省.「新サービスの基準について」p8(参照2025-04-30)
6.就労定着支援を利用する際の流れ

就労定着支援を利用するときは、まずインターネットで就労定着支援サービスを提供している事業所を探し、見学に行きましょう。
就労定着支援事業所は、就労移行支援や就労継続支援を提供している事業所に併設されていることが多いです。また市区町村の担当課でも、就労定着支援事業所を紹介してくれます。
その後、市区町村の担当課でサービスを利用したい旨を伝え、利用申請を行います。これまで他の障がい福祉サービスを利用し、同じ事業所で就労定着支援を受ける場合も、再度申請が必要です。

サービスを利用するためには、サービス等利用計画案を作成し、提出しなければなりません。自分でも作成できますが、無料で指定特定相談支援事業所に依頼することも可能です。申請後、サービスを利用できるかの調査が行われます。
調査によってサービス利用が認定されれば受給者証が発行され、サービスの利用を開始できます。
7.就労定着支援事業所を見学するまでの流れ
就労定着支援事業所を見学するまでの流れは、以下のようになります。
- 就労定着支援事業所のWebサイトにアクセスする
- ページ上の「お問い合わせボタン」をタップする
- フォームに見学を希望する旨を記載する
- 担当者からの連絡を待つ
- 日程を調整する
- 当日事業所に足を運ぶ
- 事業所の説明を受ける
- 事業所内を案内してもらう
- 疑問や不明点を質問する
事業所によっても異なりますが、見学の流れはこのようになります。
8.就労定着支援事業所に問い合わせするまでの流れ
最後に、就労定着支援事業所に問い合わせする際の流れをご紹介します。
- 就労定着支援事業所のWebサイトにアクセスする
- ページ上の「お問い合わせボタン」をタップする
- フォームに入力する
- 担当者からの連絡を待つ
- 日程を調整する
就労定着支援事業所によって異なりますが、一般的な流れは上記の通りです。電話でも問い合わせできます。
まだ見学を希望していない方も、まずメールで質問だけすることも可能です。まずは気になる事業所に問い合わせて、疑問や不明点を解消しましょう。
9.【まとめ】就労定着支援を活用して、長く働き続けよう

これまで障がいを抱えて一般就労したかたのその後として、悩みや体調不良の原因など様々な事例を見たうえで、就労定着支援の申請までを解説しました。
就職後に起こりえる悩みは以下があげられました。
- 業務に慣れない
- 職場の雰囲気になじめない
- 大きな不安やストレスを感じる
- 上司や同僚に相談できない
- 生活リズムが崩れる
- お金の使い道がわからない
一般就労を実現したものの、このような悩みを抱えて、離職を選んでしまう方も少なくありません。離職を避け、長く働き続けるには、悩みの解消が何よりも大切です。
就労定着支援を利用すれば、悩みをいつでも相談でき、解決に向けたサポートを受けられます。
安心して働き続けられるように、一般就労が実現したら就労定着支援の活用を検討してみませんか。
企業も長く働いてくれることを望んでいます。安定した収入を得ながら趣味を楽しんだり、豊かな毎日を続けていきましょう。
就労移行支援事業所である「アクセスジョブ」では「青森」「西船橋」「浜松駅前」の事業所で、就労定着支援を行っています。
他の事業所で就労移行支援を受けて一般就労を実現した方も、アクセスジョブで就労定着支援を受けていただくことが可能です。
まずはWebサイトのフォームや公式LINEからお気軽にご相談ください。見学や体験も随時実施しています。
お問合せ:就労移行支援アクセスジョブ
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就労移行支援を通して就職を目指したい方は、気になる事業所を見学してみるのがおすすめです。
メールによるお問い合わせも随時受け付けています。まずは気軽にお問い合わせください。
※1 参考:アクセスジョブ.「アクセスジョブとは」 (参照2025-04-30)
※2 参考:アクセスジョブ.「トップページ」 (参照2025-04-30)