コラム

就労継続支援A型のメリット・デメリットとは? 利用前に知っておくべき注意点
公開日:2025.07.12
更新日:2025.07.12

就労継続支援A型は、障がいや難病などを抱えている方が給与を得ながら働ける機会を作る障がい福祉サービスです。
事業所のサポートを受けながら一般就労に向けたスキルを身に付けられたり、利用期間の制限なく働けたりする点はメリットですが、一方でデメリットも存在します。
場合によっては、他の支援サービスが適している場合もあるため、事前にメリットとデメリット、注意点を確認しておきましょう。

本記事では、就労継続支援A型を利用する前に知っておきたいメリット・デメリットや注意点、他サービスとの違いなどを解説します。
>>> 目 次 <<<
それでは、早速みていきましょう。
1.就労継続支援A型とは
就労継続支援A型とは、障がいや難病などで一般企業で働くのが難しい方が、サポートを受けながら働ける福祉サービスです。
障がいや難病を持った方が働く際は、一般就労か福祉的就労のどちらかを選びます。一般就労は、一般企業で雇用契約を結び、他の従業員と同じように就労する働き方です。

一方、福祉的就労は、本人の体調や生活の状況に合わせて働ける環境で、給与を得ながら就労することを意味します。就労継続支援A型は、後者の福祉的就労に分類されます。
支援の対象は、65歳未満で以下の条件を満たす方です(※)。
- 通常の事業所に雇用されるのが難しいが、支援があれば雇用契約を締結して就労できる障がい者
- 通常の事業所に雇用されているが、主務省令で定める事由により当該事業所での就労に必要な知識やスキルを補うために一時的なサポートが必要な障がい者
ただし、65歳になるまでの過去5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けており、65歳になる日の前日に就労継続支援A型の支給を受けていた場合は、引き続き支援の利用が可能です(※)。
※参考:厚生労働省.「就労移行支援」.”就労継続支援A型” (参照2025-05-01)
2.就労継続支援A型を利用するメリット
就労継続支援A型の利用のメリットをご紹介いたします。具体的な内容は、以下の通りです。
- 最低賃金が保証される
- 一般就労より低いハードルで働ける
- 一般就労に向けた知識やスキルが身に付く
- 利用期間に決まりがない
- 生活リズムが整う
●最低賃金が保証される
就労継続支援A型では事業所と雇用契約を結ぶため、給与に対して最低賃金が適用されます。前述の通り厚生労働省の調査では、就労継続支援A型事業所の2023年度の平均賃金は月額8万6,752円です(※)。2019年度には7万8,975円だったため、過去数年で約7,000円増加しています(※)。
一般就労より給与は少ない傾向にありますが、ある程度まとまったお金が毎月入ってくるのは、経済的な不安の軽減につながります。
※参考:厚生労働省.「令和5年度工賃(賃金)の実績について」.”就労継続支援A型事業所 平均賃金について” (参照2025-05-01)

●一般就労より低いハードルで働ける
就労継続支援A型は、病気や障がいなどで一般企業で働くのが難しい方でも、比較的低いハードルで働きやすい傾向があります。支援員が就労に関する悩みや希望をヒアリングした上でサポートをしてくれるため、無理のない形で仕事をスタートできる点がメリットです。
また、医師が発行した診断書なども考慮した上で支援してくれるため、自分の体調に合った働き方を選びやすいのも大きな特徴です。
●一般就労に向けた知識やスキルが身に付く
就労継続支援A型では、実際の仕事を通じて一般就労に必要な知識やスキルを身に付けることができます。

コミュニケーション能力や時間管理など、働く上で欠かせない基本的な力を実践的に学べるため、就職活動に向けた準備として役立ちます。
例えばパソコンを使う仕事を選べば、文字入力や資料作成などのスキルを身に付けることが可能です。
将来的に事務職や在宅ワークを目指す方にとっては、こうした経験が実際の就職活動でも生かしやすくなるでしょう。
●利用期間に決まりがない
就労継続支援A型は、利用期間に決まりがありません(※1)。そのため、焦らず自分のペースで働き続けやすい傾向があります。
就労移行支援では利用期間2年間のあいだに「一般企業に早く就職しなければならない」と思うと、プレッシャーを感じてしまい、かえって体調を崩してしまう可能性があります。
A型の支援なら、心身の状態に合わせて少しずつ一般就労へのステップを踏んでいくことが可能です。
ただし、就労継続支援A型の利用は、原則65歳未満の方が対象です(※2)。65歳以上の方は、要件を満たしていなければ利用できないため注意しましょう。
※1参考:厚生労働省.「障害者の就労支援について」p4 (参照2025-05-01)
※2参考:厚生労働省.「就労移行支援」p2 (参照2025-05-01)
●生活リズムが整う

決まった日時に就労するため、生活リズムを整えるきっかけになります。自宅にいる時間が長かった方や、昼夜逆転しがちだった方でも、徐々に朝起きて外に出る習慣が付きやすくなります。
仕事を通じて一日の流れができることで、メリハリのある健康的な生活の基盤を整えやすくなるでしょう。
2.就労継続支援A型を利用するデメリット
就労継続支援A型は、障がいや病気のある方が事業所のサポートを受けながら働ける制度ですが、いくつかデメリットもあります。
事前に注意点やデメリットを把握しておくことで、自分の希望に合った支援を受けられるか見極めやすくなります。

就労継続支援A型の就労を目指す上で抑えておきたいデメリットは、主に以下の4つです。
- 一般就労より給与が少ない
- 一般就労へのサポートが少ない傾向にある
- 安定して通うことが求められる
- 利用するには採用面接がある
●一般就労より給与が少ない
就労継続支援A型は、一般企業での就労と比べると給与が少ない傾向にあります。厚生労働省の調査によると、2023年度の就労継続支援A型事業所の平均賃金は月額8万6,752円です(※)。

就労継続支援A型では雇用契約を結んで就労しますが、最終的な目標は安定した給与を得ることではなく、働く場を与えて仕事に必要な知識や能力を習得することです。
事業所が定めている利用時間で働くため、短時間勤務となるケースが多く、思うような収入が得られない可能性があります。
ただし、障害年金を受給されていたり、生活保護で差額をが支給される場合や、家族と同居されて生活費に困らないかたは、就労継続支援A型の給与で生活ができそうです。
※参考: 厚生労働省.「令和5年度工賃(賃金)の実績について」(参照2025-05-01)
●一般就労へのサポートが少ない傾向にある
ステップアップとして先で一般就労を目指す人には、就職へのサポートが十分に受けられない可能性があるのもデメリットの一つと言えるかもしれません。前述の通り、就労継続支援A型は働く場の提供に重きを置いた福祉サービスのため、一般就労に向けた訓練や支援が必ずしも充実しているとは限りません。
もちろん就労訓練という位置付けではありますが、主軸はA型の仕事にあります。働く訓練をじっくり受けたい方や段階的にスキルを学びたい方は、一般企業への就職を目的とした就労移行支援を検討すると良いでしょう。
●安定して通うことが求められる
就労継続支援A型は雇用契約を結んで就労するため、決められた日に安定して通う必要があります。そのため、体調不良による長期欠勤を取得するのは難しいでしょう。
勤務時間の一般的な目安は、週5日・1日4~6時間程度です。体調や生活リズムに不安がある方は「決められた日時に出勤できるだろうか」と、働くこと自体がプレッシャーになってしまう可能性があります。
事前に無理なく通える勤務形態かどうか、勤務時間に融通が利くかどうか確認しましょう。
●利用するには採用面接がある
就労継続支援A型を利用するには、事前に採用面接を受ける必要があります。働く場を提供するサービスではありますが、パート様なイメージで雇用契約を結んで働くため、事業所は面接や書類選考で適した人材かどうかを判断します。

面接では、一般企業と同様に志望動機や自己PR、今後の目標、体調面などを質問されるのが一般的です。面接に苦手意識がある方や、体調面での不安、緊張などからうまく話せない方は、採用面接がハードルになる可能性があります。
4.就労継続支援A型に向いている方の特徴
ここまで障がい福祉サービスの一つである、就労継続支援A型で働くメリット・デメリットをみてきました。みなさまはいかがでしたでしょうか。
就労継続支援A型に向いている方の特徴は、以下の通りです。
- 病気や障がいなどで一般企業での就労が難しい方
- 自分の体調や希望に合った働き方を望んでいる方
- 長期間働いていないが、無理のないペースで仕事を再開したいと考えている方
- 病気や障がいを持っていても、無理のない範囲で給与を得たい方
- 働くことに少しずつ慣れていき、将来的に一般就労を目指したい方
- サポートを受けながら、一般就労に必要なスキルや知識を身に付けたい方(コミュニケーション能力・時間管理能力・協調性など)
このように、就労継続支援A型は「いきなり一般企業で働くのは不安だけれど、サポートがあれば働けそう」と感じている方に適している福祉サービスです。
サポート体制の整った環境で実際の業務に取り組むことで、自分に合った働き方が見つけやすくなります。
ただし、事業所によってサポート体制や業務内容が異なるため、見学や相談会で複数の事業所を比較検討すると良いでしょう。
5.就労継続支援A型に向いていない方の特徴
就労継続支援A型に向いていない方の特徴は、以下の通りです。
- 一般就労に向けた訓練や支援をしっかり受けたい方
- 体調が万全でなく、決められた日時に出勤するのが難しい方
- 一般企業と同等の給与水準を求めている方
就労継続支援A型は、働く場を提供する福祉サービスのため、就職支援に特化した訓練やサポートが十分に受けられない可能性があります。

また雇用契約に基づいて労働するため、体調が万全でない方は、決められた日時に出勤するのが大きな負担になる可能性があります。
このように体調に自信がない場合や、初めて就労経験をする方は就労継続支援B型の利用を検討すると良いでしょう。
さらに、一般企業と同等の給与水準を求めている方は、就労継続支援A型の収入では経済的な不安を感じやすいかもしれません。すでに体調が整い、一般就労を目指す方は就労移行支援の利用を検討してみませんか。
6.就労継続支援A型と他の就労系支援サービスとの比較
就労継続支援A型の他にも、障がいや病気がある方を対象とした就労系障がい福祉サービスは2つあります。サービスごとに目的やサポートの内容などが異なるため、事前に何がどう違うのか確認しておきましょう。
ここでは、就労移行支援と就労継続支援B型との違いを解説します。
●就労移行支援との違い
就労移行支援は、就労継続支援と同じ就労系の障がい福祉サービスではありますが、「一般就労を目指す」ための訓練の実施、就職サポート、職場定着(半年間)を行うサービスです。
障がいがある方に向けて働くための必要な知識や、スキルを習得するサポートを行っており、履歴書の書き方や面接対策など、就職活動の支援を行っています。

一般就労を目指したいものの、おひとりで就職する事に自信のないかたや、休職したのち、復職(リワーク)をお考えの方など支援の幅は広くなっています。
就労継続支援A型は利用期間が決まっていませんが、就労移行支援は最長2年までとされています(※)。利用期限は受給者証に記載の通りとなりますが、基本的には限りある2年間で就職を目指します。
また、ご家族や主治医、就職先の企業と連携をしながら、半年間の職場定着までをサポートします。
就職する時期はご事情により人それぞれで、3か月~半年で就職される方もいらっしゃれば、2年間いっぱい利用される方もいらっしゃいます。
ただし、就労移行支援は就職するまでの準備期間としての位置付けになるため、毎月の給与は発生しません。
学校の様なイメージで「一般就労を目指したい」「まずは働く訓練から始めたい」「資格やスキルを身に着けたい」といった方は、就職までのサポートが手厚い就労移行支援を利用すると良いでしょう。
※参考:厚生労働省.「障害者の就労支援について」p4 (参照2025-05-01)
●就労継続支援B型との違い
就労継続支援B型は、病気や障がいなどの影響で雇用契約を結んで働くのが難しい方を対象にした福祉サービスです。

賃金は工賃と呼ばれ、A型よりも毎月の収入が少なく、2023年度の平均賃金は2万3,053円となっています(※)。毎月安定した収入を得たい方は、B型では経済的な不安を抱えやすい可能性があります。
しかし、その分出勤日や出勤時間を柔軟に決められる場合が多く、比較的融通が利きやすい点が大きな特徴です。
体調に波がある方や、まずは短時間から少しずつ働きたい方にとっては、無理なく働くことから始まり、コミュニケーションを学んでいける傾向があります。
たとえば週2日から始めて、1年後には週5日通所できたり、仕事の中で役割を果たすことができる、というようなスモールステップを積み重ね、社会にでる準備をゆっくりと行うことができます。
レクレーションやお楽しみ会なども事業所によって実施されることもあります。
※参考:厚生労働省.「令和5年度工賃(賃金)の実績について」p1 (参照2025-05-01)
7.就労継続支援A型を利用する前に知っておくべき注意点
就労継続支援A型を利用する際は、制度の仕組みだけでなく、利用料や仕事内容、事業所の雰囲気などを把握する必要があります。

体調やライフスタイル、予算などとマッチしていない事業所を選ぶと、働き続けるのが難しくなったり、体調を崩してしまったりする可能性もあるためです。
無理なく支援を受けられるよう、以下のポイントに注目して事業所を選びましょう。
- 利用料
- 仕事内容の把握
- 自分に合う事業所を選ぶ
- 事業所の見学をする
以下で詳しく解説します。
●利用料
就労継続支援A型は、公的な障がい福祉サービスの一つですが、利用料として一定の自己負担金が発生する可能性があります。
利用料は、前年度の世帯収入状況に応じて上限額が決められています(※)。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 自己負担の上限額(月額) |
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 (3人世帯かつ障害者基礎年金1級を受給している場合は、収入が約300万円以下の世帯) | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯 (収入が約670万円以下の世帯) (20歳以上の入居施設利用者、グループホーム利用者を除く) | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 3万7,200円 |
このように、一定の収入を超えると利用料(上限あり)がかかるため、事前に自己負担額を確認しておきましょう。
※参考:厚生労働省.「障害者の利用者負担」(参照2025-05-01)
●仕事内容の把握
仕事内容も事前に確認しておきましょう。仕事内容が希望からかけ離れていた場合、働くうちにストレスを感じてしまう可能性があるためです。
就労継続支援A型で扱っている仕事は、事業所によってさまざまです。飲食店での接客や、データ入力・資料作成などの事務作業、工場での軽作業などがあります。

例えば、将来事務職を目指している方が接客業を選ぶと、目的の事務スキルを十分に習得できない可能性があります。
適性に合った仕事を長く続けるためにも、いろいろな事業所の仕事風景を見学したり、ハローワークからでている求人票に不明点があれば質問したりしましょう。
●自分に合う事業所を選ぶ
自分に合った事業所を選ぶことは大切なポイントです。支援を受ける際は、基本的に週5日ほど事業所に通所するため、雰囲気や環境が合わない場合、通うのが負担になってしまう可能性があります。
事業所の雰囲気は、支援員の人柄や経営方針などによって変わります。

特に支援員との相性は相談のしやすさに影響するため、事前の説明会や見学などで確認しましょう。
●事業所の見学をする
パンフレットやホームページだけでは把握できない事務所の雰囲気を知るためにも、事前に見学しておきましょう。見学でチェックすべきポイントは、以下の通りです。
- 仕事場の雰囲気
- 支援員の人柄
- 設備の充実度(手すりやスロープの有無など)
- 休憩場所・休憩時間
- 通いやすい場所にあるか
上記を確認することで、無理なく通所できるのか判断しやすくなるでしょう。
体験ができる事業所でしたら、無給となりますが半日や1日体験して体感してみてもよいと思います。
【まとめ】メリット・デメリットを把握して後悔のない選択をしよう
就労継続支援A型は最低賃金が保証されており、実務を通して働く習慣やスキルを身に付けられるといったメリットがあります。

その一方で給与水準が比較的低い、サポート体制が物足りなく感じるなどのデメリットもあります。
一般就労を視野に入れている場合、就労移行支援も視野に入れながら適切な選択をしましょう。
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※1 参考:アクセスジョブ.「アクセスジョブとは」 (参照2025-04-30)
※2 参考:アクセスジョブ.「トップページ」 (参照2025-04-30)